パッククッキングとは?

パッククッキングとは、ポリ袋に食材を入れ、鍋のお湯で湯せんして加熱する調理方法です。

「ポリ袋調理」と呼ばれることもあります。

食材を袋の中で調理するため、鍋が汚れにくく、食器に移さず袋のまま食べることもできます。

そのため、断水時や避難生活で洗い物を減らしたいときに役立ちます。

たとえば、米と水をポリ袋に入れて湯せんすれば、ご飯を炊くことができます。

缶詰やレトルト食品を組み合わせれば、簡単なおかずも作れます。

ホットケーキミックスを使えば、簡単なおやつも作れます。

災害時の食事は、乾パンや缶詰、レトルト食品だけになりがちです。

しかし、温かいご飯や汁物、おかずがあると、体だけでなく気持ちも落ち着きやすくなります。

パッククッキングは、限られた道具と水で温かい食事を作るための実用的な方法です。

災害時にパッククッキングが役立つ理由

災害時にパッククッキングが役立つ理由は、大きく3つあります。

少ない水で調理できる

通常の調理では、食材を洗う、鍋で煮る、食器を洗うなど、多くの水を使います。

しかし、断水時は水が貴重です。

パッククッキングでは、食材を袋に入れて加熱するため、鍋のお湯を直接料理に使わない場合があります。

袋が破れなければ、湯せんに使ったお湯を複数回使えることもあります。

もちろん、衛生状態には注意が必要ですが、鍋を直接汚しにくい点は大きなメリットです。

洗い物を減らせる

災害時に困るのは、食事を作ることだけではありません。

食器や調理器具を洗う水がないことも大きな問題です。

パッククッキングでは、ポリ袋の中で調理するため、鍋や食器の汚れを減らせます。

袋を皿の上にのせて食べれば、皿を汚さずに済みます。

さらに、皿にラップを敷いて使うと、食後にラップを外すだけで済むため、洗い物をさらに減らせます。

断水時には、この「洗い物を出さない工夫」がとても重要です。

複数の料理を同時に作りやすい

パッククッキングでは、1つの鍋で複数の袋を同時に加熱できます。

たとえば、1袋にはご飯、別の袋にはおかず、さらに別の袋には離乳食やおかゆを入れることもできます。

家族それぞれの食事内容を分けやすい点もメリットです。

高齢者にはやわらかいおかゆ、子どもには甘めの蒸しパン、大人には缶詰を使ったおかずなど、袋ごとに内容を変えられます。

ただし、加熱時間や食材の火の通り方は料理によって異なります。

初めて災害時に試すのではなく、平時に一度作ってみることが大切です。

パッククッキングに必要な道具

パッククッキングに必要な道具は、特別なものばかりではありません。

家庭にあるものでも始められます。

ただし、ポリ袋の種類や火の扱いには注意が必要です。

高密度ポリエチレン袋を使う

パッククッキングでは、湯せんに使える耐熱性のあるポリ袋を使います。

一般的には、高密度ポリエチレン製のポリ袋が使われることがあります。

ただし、すべてのポリ袋が加熱調理に使えるわけではありません。

薄い袋、低温で変形しやすい袋、加熱不可と表示されている袋は使わないようにしましょう。

購入時には、次の点を確認してください。

  • 食品用と表示されているか
  • 湯せん調理に使えるか
  • 耐熱温度の表示があるか
  • 厚みがあり破れにくいか
  • 電子レンジ専用ではないか
  • 製品の注意書きに反していないか

「ポリ袋なら何でもよい」と考えるのは危険です。

必ず製品表示を確認し、加熱に適した袋を使いましょう。

カセットコンロ・鍋・耐熱皿を用意する

停電やガス停止時にパッククッキングを行うには、カセットコンロがあると便利です。

あわせて、鍋、鍋底に敷く耐熱皿、トング、軍手や鍋つかみなども用意しておきましょう。

必要な道具は、次のとおりです。

  • カセットコンロ
  • カセットボンベ
  • 深めの鍋
  • 鍋底に敷く耐熱皿
  • 高密度ポリエチレン袋
  • トング
  • 軍手・鍋つかみ
  • 計量カップ
  • スプーン
  • ラップ
  • 紙皿・紙コップ

鍋底に耐熱皿を敷くのは、ポリ袋が鍋底に直接触れて破れるのを防ぐためです。

袋が鍋底や鍋肌に直接触れ続けると、熱で破れる可能性があります。

必ず鍋底に皿を敷き、袋が直接高温部分に触れないようにしましょう。

カセットボンベの備蓄も忘れない

カセットコンロがあっても、カセットボンベがなければ使えません。

災害時の調理を考えるなら、カセットボンベも一緒に備えておく必要があります。

ただし、カセットボンベは保管方法に注意が必要です。

直射日光が当たる場所、高温になる場所、火気の近く、湿気の多い場所は避けましょう。

また、古いボンベ、さびたボンベ、変形したボンベは使用しないようにします。

使用期限や製造時期も確認しておくと安心です。

カセットコンロやボンベは、便利な一方で火災や事故のリスクもあります。

必ず取扱説明書を読み、正しい使い方を守りましょう。

パッククッキングの基本手順

パッククッキングは、基本の流れを覚えれば難しくありません。

ここでは、一般的な手順を紹介します。

食材を袋に入れて空気を抜く

まず、ポリ袋に食材と水、調味料などを入れます。

ご飯なら、米と水を入れます。

おかずなら、缶詰、野菜、調味料などを入れます。

食材を入れたら、袋の中の空気をできるだけ抜きます。

空気が多く残っていると、湯せん中に袋が浮きやすくなり、加熱ムラが出ることがあります。

袋を水に沈めながら空気を抜く方法もありますが、災害時は水が貴重です。

袋の口を軽くねじりながら、できる範囲で空気を抜きましょう。

袋の口を上の方で結ぶ

袋の口は、食材のすぐ近くではなく、少し上の方で結びます。

加熱中に中身が膨らむことがあるため、余裕を持たせるためです。

結び目がほどけると中身が出てしまうため、しっかり結びましょう。

ただし、結び目をきつくしすぎると、開けるときに苦労する場合があります。

災害時はハサミがないこともあるため、開けやすさも考えておくと便利です。

鍋底に皿を敷いて湯せんする

鍋に水を入れ、鍋底に耐熱皿を敷きます。

そこへ食材を入れたポリ袋を入れ、加熱します。

袋が鍋底に直接触れないよう注意してください。

加熱時間は、料理や食材の量によって異なります。

ご飯の場合は、吸水時間や蒸らし時間も必要になります。

初めて作る場合は、平時に少量で試してみることをおすすめします。

加熱後の袋は熱くなっています。

取り出すときは、トングや軍手、鍋つかみを使い、やけどに注意しましょう。

災害時に作りやすい基本レシピ

ここでは、災害時に作りやすい基本レシピを紹介します。

実際に作る際は、袋や調理器具の表示、家庭の状況に合わせて調整してください。

パッククッキングご飯

基本のご飯は、米と水だけで作れます。

材料の例

  • 無洗米:1/2合
  • 水:およそ100ml〜120ml

作り方

  1. ポリ袋に無洗米と水を入れる
  2. できれば20〜30分ほど吸水させる
  3. 袋の空気を抜いて、上の方で口を結ぶ
  4. 鍋底に皿を敷いた鍋で湯せんする
  5. 加熱後、しばらく蒸らす

水の量や加熱時間は、米の種類や好みによって変わります。

災害時に失敗しないためには、普段のうちに一度試して、自分の家庭に合う水加減を確認しておきましょう。

缶詰を使った簡単おかず

缶詰は、そのまま食べられる便利な備蓄食品です。

パッククッキングでは、缶詰に野菜や調味料を足して温めることで、簡単なおかずにできます。

例:サバ缶と野菜の味噌風味

材料の例

  • サバ味噌煮缶
  • カット野菜または乾燥野菜
  • 少量の水
  • 好みで味噌やしょうが

作り方

  1. ポリ袋に材料を入れる
  2. 空気を抜いて袋の口を結ぶ
  3. 湯せんで温める
  4. 皿にラップを敷き、袋から出して食べる

缶詰はすでに加熱済みの食品が多いため、温めるだけでも食べやすくなります。

ただし、野菜を加える場合は、火が通るまでしっかり加熱しましょう。

ホットケーキミックスで作る簡単蒸しパン

災害時でも、甘いものがあると気持ちが落ち着くことがあります。

ホットケーキミックスを使えば、簡単なおやつも作れます。

材料の例

  • ホットケーキミックス
  • 水または牛乳
  • 好みでレーズン、チョコ、ナッツなど

作り方

  1. ポリ袋にホットケーキミックスと水を入れる
  2. 袋の中でよく混ぜる
  3. 空気を抜きすぎず、少し余裕を持って口を結ぶ
  4. 鍋で湯せんする
  5. 火が通ったら取り出す

袋いっぱいに生地を入れると膨らんで破れることがあります。

少量ずつ作るのが安全です。

また、チョコやナッツを入れる場合は、アレルギーにも注意しましょう。

断水時に洗い物を減らす工夫

災害時は、水を節約するために、調理だけでなく食後の片付けも工夫する必要があります。

洗い物を減らす方法としては、次のようなものがあります。

  • 皿にラップを敷いて使う
  • 紙皿・紙コップを使う
  • 割り箸や使い捨てスプーンを使う
  • ポリ袋のまま食べる
  • 調理器具をできるだけ使わない
  • 汁気の多い料理をこぼさないようにする
  • 食後のごみを防臭袋にまとめる

ただし、使い捨て用品を使うとごみは増えます。

災害時はごみ収集が止まることもあるため、使用済みの袋や食器を保管するためのごみ袋、防臭袋、ふた付きの容器もあると安心です。

パッククッキングで注意したいこと

パッククッキングは便利ですが、注意点もあります。

安全に使うために、次の点を確認しておきましょう。

加熱できる袋を使う

ポリ袋なら何でもよいわけではありません。

加熱に適していない袋を使うと、破れたり、変形したりする可能性があります。

必ず食品用・湯せん可能・耐熱温度などの表示を確認しましょう。

袋を鍋底に直接触れさせない

袋が鍋底に直接触れると、熱で破れることがあります。

必ず鍋底に耐熱皿を敷き、袋が直接高温部分に触れないようにします。

やけどに注意する

湯せん後の袋や鍋のお湯は非常に熱くなっています。

素手で取り出さず、トングや軍手、鍋つかみを使いましょう。

子どもが近くにいる場合は、鍋やコンロに近づけないよう注意が必要です。

カセットコンロの使い方を守る

カセットコンロは便利ですが、使い方を誤ると事故につながります。

大きすぎる鍋や鉄板を使う、ボンベ部分を覆う、2台並べて使う、換気をしないなどの使い方は避けましょう。

必ず取扱説明書に従い、安定した場所で使います。

食中毒を防ぐ

災害時は、手洗いや調理器具の洗浄が難しくなります。

食材を扱う前には、ウェットティッシュや手指消毒用品を使い、できるだけ衛生的に調理しましょう。

加熱が必要な食材は、中心までしっかり火を通します。

作った料理は長時間放置せず、早めに食べることも大切です。

パッククッキングは普段から練習しておく

パッククッキングは、知識として知っているだけでは、災害時にすぐ実践できないことがあります。

袋の結び方、水加減、加熱時間、鍋の大きさ、家族の好みなどは、実際にやってみないと分かりません。

おすすめは、月に1回程度、防災ごはんの日を作ることです。

たとえば、休日の昼食にパッククッキングでご飯を炊いてみる。

ローリングストックの缶詰を使っておかずを作ってみる。

子どもと一緒に蒸しパンを作ってみる。

このように普段の生活で試しておけば、災害時にも慌てずに使いやすくなります。

また、食べ慣れていない非常食より、普段から食べている味の方が、災害時にも受け入れやすくなります。

パッククッキング用チェックリスト

最後に、家庭で備えておきたい道具を整理します。

調理道具

  • カセットコンロ
  • カセットボンベ
  • 深めの鍋
  • 鍋底に敷く耐熱皿
  • 高密度ポリエチレン袋
  • トング
  • 軍手・鍋つかみ
  • 計量カップ
  • スプーン
  • キッチンばさみ

食材

  • 無洗米
  • パックごはん
  • 缶詰
  • レトルト食品
  • フリーズドライ食品
  • 乾燥野菜
  • ホットケーキミックス
  • スープ類
  • 調味料
  • 飲料水

洗い物を減らす用品

  • ラップ
  • 紙皿
  • 紙コップ
  • 割り箸
  • 使い捨てスプーン
  • ウェットティッシュ
  • キッチンペーパー
  • ごみ袋
  • 防臭袋

安全対策

  • 消火器
  • 耐熱手袋
  • 換気できる環境
  • 取扱説明書
  • 子どもを近づけない工夫

このチェックリストをもとに、自宅の防災用品を一度確認してみてください。

カセットコンロはあるけれどボンベが少ない、ポリ袋はあるけれど加熱対応か分からない、鍋底に敷く皿を用意していない、ということもあります。

まとめ:パッククッキングは普段から練習しておくと災害時に役立つ

パッククッキングは、ポリ袋に食材を入れて湯せんする調理方法です。

少ない水で調理でき、洗い物を減らせるため、断水時や在宅避難中の食事づくりに役立ちます。

ご飯、おかず、蒸しパンなど、工夫次第でさまざまな料理を作ることができます。

ただし、ポリ袋なら何でも使えるわけではありません。

食品用で、湯せん調理に適した袋を選び、鍋底に耐熱皿を敷いて、袋が直接高温部分に触れないようにしましょう。

カセットコンロを使う場合は、換気、火災、やけど、ボンベの保管にも注意が必要です。

パッククッキングは、災害時に初めて挑戦するより、平時に一度試しておくことが大切です。

ご飯の水加減、袋の結び方、加熱時間、家族の好みは、実際に作ってみるとよく分かります。

今日できることは、まず次の3つです。

  • 湯せん可能な食品用ポリ袋があるか確認する
  • カセットコンロとボンベの保管場所・本数を確認する
  • 休日の昼食に、パッククッキングでご飯を炊いてみる

災害時の食事は、命をつなぐだけでなく、気持ちを支えるものでもあります。

温かい食事を作る方法をひとつ知っておくだけで、在宅避難の安心感は大きく変わります。

参考情報

※以下の参考情報は、2026年6月7日に確認しています。

・農林水産省「時短にも非常時にも!パッククッキング」
本記事では、パッククッキングの考え方と、災害時だけでなく日常にも活用できる調理法である点を確認しました。

・農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」
本記事では、災害時の食品備蓄、要配慮者への食の備え、パッククッキングの活用情報を確認しました。

・内閣府「特集 災害の備え、何をしていますか」
本記事では、災害時の食料・飲料水の備蓄や、自治体備蓄の考え方を確認しました。

・首相官邸「災害の『備え』チェックリスト」
本記事では、家庭で備える水・食料・非常用持ち出し品の基本項目を確認しました。

・東京消防庁・関係機関のカセットこんろに関する注意喚起
本記事では、カセットコンロ使用時の火災・やけど・誤使用防止の考え方を参考にしました。

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家庭防災の教科書 編集部
家庭の防災・停電対策・在宅避難に役立つ情報を発信する編集部です。地震・台風・停電・断水などに備え、ポータブル電源、非常食、保存水、簡易トイレ、防災グッズなど、暮らしの中で取り入れやすい「現実的な備え」をわかりやすく紹介しています。