罹災証明書とは?片付け前に撮っておきたい被害写真の撮り方
罹災証明書とは?
罹災証明書とは、地震、台風、大雨、洪水などの災害によって住まいが被害を受けた場合に、市区町村が住家の被害の程度を証明する書類です。
一般的には、被災者生活再建支援金、義援金、税金や保険料の減免、各種支援制度、融資、仮設住宅など、被災後の生活再建に関わる手続きで必要になることがあります。
罹災証明書で証明されるのは、主に住家の被害の程度です。
被害の程度は、全壊、大規模半壊、中規模半壊、半壊、準半壊、一部損壊などの区分で判定されることがあります。
ただし、具体的な支援制度や申請方法は、災害の種類、自治体、被害状況によって異なります。
そのため、実際に申請するときは、必ずお住まいの市区町村の最新情報を確認してください。
また、火災による被害の場合は、自治体ではなく消防署が「り災証明書」を発行するケースがあります。
名称が似ていますが、自然災害による住家被害の罹災証明書とは窓口が異なる場合があります。
被災後すぐに片付ける前に、まず写真を撮る理由
災害で家が被害を受けたとき、多くの人はすぐに片付けを始めたくなります。
割れたガラスを片付けたい。
濡れた畳や家具を外へ出したい。
泥をかき出したい。
壊れた屋根や窓を早く直したい。
その気持ちは自然です。
しかし、片付けや修理の前に、できる範囲で被害状況を写真に残しておくことがとても大切です。
写真は、罹災証明書の取得や、損害保険の請求、修理業者への説明、家族との情報共有などに役立ちます。
特に、水害や地震では、片付け後に被害の程度を正確に説明することが難しくなる場合があります。
たとえば、床上浸水の高さ、壁の水の跡、家具の転倒状況、天井や壁のひび割れ、住宅設備の破損などは、時間が経つと分かりにくくなります。
もちろん、安全確保が最優先です。
危険な場所に無理に入って撮影する必要はありません。
ただ、安全が確認できる範囲で、片付ける前の状態を記録しておくことが、後の生活再建を助けます。
被害写真を撮る前に注意したい安全確認
写真を撮ることは大切ですが、命やけがの危険を冒してまで撮影する必要はありません。
被災後の家には、見えにくい危険が残っていることがあります。
撮影前に、次の点を確認しましょう。
- 建物が傾いていないか
- 屋根や外壁が落ちてこないか
- 割れたガラスや釘が落ちていないか
- 電線が垂れ下がっていないか
- ガスの臭いがしないか
- 水が引いていない場所に入ろうとしていないか
- ブレーカーや電気設備に異常がないか
- 土砂崩れや地盤の崩れがないか
少しでも危険を感じる場合は、無理に自宅へ入らないでください。
特に、地震後の建物、浸水後の電気設備、土砂が流れ込んだ住宅、屋根や高所の被害は危険です。
屋根の上に登って写真を撮ることも避けましょう。
高所の被害は、修理業者や専門家が安全を確保したうえで撮影した写真を使える場合があります。
被害記録は大切ですが、最優先は自分と家族の安全です。
家の外の写真の撮り方
被害写真を撮るときは、家の外から撮影を始めると全体像を残しやすくなります。
外観の写真は、建物全体の被害状況、周囲の浸水や土砂の状況、外壁や屋根の損傷などを説明するために役立ちます。
建物全体をなるべく4方向から撮る
家の外観は、なるべく4方向から撮影しましょう。
正面だけでなく、右側、左側、裏側も撮っておくと、建物全体の状況が分かりやすくなります。
撮影するときは、建物全体が入るように少し離れて撮ります。
可能であれば、次のように撮ると整理しやすくなります。
- 正面全体
- 右側全体
- 左側全体
- 裏側全体
- 屋根や外壁の被害が分かる角度
- 敷地周辺の浸水や土砂の状況
建物の一部だけをアップで撮ると、どの場所の被害か分かりにくくなります。
まずは全体を撮り、その後に被害箇所の近くを撮るようにしましょう。
表札・建物名・周辺状況も撮る
写真を見返したときに、どの建物の被害なのか分かるようにしておくことも大切です。
一戸建ての場合は、表札や門、建物全体が分かる写真を撮っておきましょう。
マンションやアパートの場合は、建物名、部屋番号が分かる部分、共用部の被害、室内の被害などを記録しておくとよいでしょう。
ただし、個人情報や近隣住民のプライバシーには注意してください。
SNSなどに投稿する必要はありません。
写真は、罹災証明書の申請、保険会社への説明、修理業者との打ち合わせなど、必要な範囲で使うための記録です。
また、周辺道路の冠水、敷地内に流れ込んだ泥、倒れた塀、壊れた門扉、物置や車庫の被害なども、安全に撮影できる範囲で残しておくと役立つことがあります。
浸水した場合は深さが分かるように撮る
水害で家が浸水した場合は、浸水の深さが分かる写真を撮っておきましょう。
床上浸水か床下浸水か、どの高さまで水が来たかは、被害の程度を説明するうえで重要です。
撮影のポイントは、次のとおりです。
- 外壁や室内の水の跡を撮る
- メジャーを当てて高さが分かるように撮る
- 床から何センチまで浸水したか分かるようにする
- 玄関、リビング、台所、寝室など複数の場所を撮る
- 泥の跡や水位の線が残っているうちに撮る
メジャーがない場合は、定規やペットボトルなど、サイズが分かるものを一緒に写す方法もあります。
ただし、できればメジャーを使う方が、後で確認しやすくなります。
浸水後は、衛生面にも注意が必要です。
泥水には汚れや細菌が含まれている可能性があります。
撮影や片付けの際は、長靴、手袋、マスクなどを使い、肌に直接触れないようにしましょう。
家の中の写真の撮り方
家の中の写真は、被害の全体像と細部の両方を残すことが大切です。
部屋ごとに撮る順番を決めておくと、後から整理しやすくなります。
部屋ごとの全景を撮る
まず、各部屋の全景を撮りましょう。
リビング、台所、寝室、子ども部屋、洗面所、浴室、トイレ、玄関、廊下など、被害がある部屋ごとに、部屋全体が分かる写真を撮ります。
全景写真を撮る理由は、被害箇所の位置関係を残すためです。
アップの写真だけでは、その被害がどの部屋のどの場所なのか分からなくなることがあります。
撮影するときは、次のように意識しましょう。
- 部屋の入口から全体を撮る
- 反対側からも撮る
- 家具の転倒や散乱状況を撮る
- 床、壁、天井が分かるように撮る
- 浸水や泥の跡が分かるように撮る
「全体を撮る→被害箇所を撮る」という順番にすると、後から見ても分かりやすくなります。
被害箇所は「引き」と「寄り」で撮る
被害箇所は、遠くからの写真と近くからの写真の両方を撮りましょう。
これを「引き」と「寄り」で撮る、と考えると分かりやすいです。
たとえば、壁にひび割れがある場合は、まず部屋全体の中でひび割れの位置が分かる写真を撮ります。
その後、ひび割れに近づいて、幅や長さが分かるように撮ります。
撮影したい被害の例は、次のとおりです。
- 壁のひび割れ
- 天井の破損
- 床の沈みやゆがみ
- ドアや窓の破損
- 外壁のひび割れ
- 屋根材の破損
- 雨漏りの跡
- 浸水の跡
- 畳やフローリングの変色
- 家具や家電の破損
被害のアップだけでは、場所が分かりにくくなります。
必ず、全体の中でどこが壊れているのか分かる写真も撮っておきましょう。
住宅設備・家電・家具の被害も残す
罹災証明書では住家の被害認定が中心になりますが、生活再建や保険請求のためには、住宅設備や家財の被害記録も役立つことがあります。
撮影しておきたいものは、次のようなものです。
- システムキッチン
- 洗面台
- トイレ
- 浴室
- 給湯器
- エアコン
- 冷蔵庫
- 洗濯機
- テレビ
- 家具
- 寝具
- 衣類
- 物置
- 自動車
- 農機具
被害を受けたものは、処分する前に写真を撮っておきましょう。
水にぬれた家電や家具は、早く外へ出したくなります。
しかし、処分後に被害を説明するのは難しくなります。
型番やメーカー名、購入時期が分かるものがあれば、それも記録しておくと整理しやすくなります。
メジャーや日付メモを使った記録のコツ
被害写真は、ただ撮るだけでなく、「後で見た人に伝わる写真」にすることが大切です。
そのために役立つのが、メジャー、日付メモ、撮影順の工夫です。
メジャーを一緒に写す
浸水の高さ、ひび割れの幅、破損部分の大きさなどは、メジャーを当てて撮ると分かりやすくなります。
たとえば、次のような場面で役立ちます。
- 壁の水位線
- 床からの浸水高
- 外壁のひび割れ
- 基礎のひび割れ
- 壊れた建具のすき間
- 雨漏りの広がり
メジャーがない場合でも、定規や硬貨など、サイズの参考になるものを一緒に写すと、被害の大きさを説明しやすくなります。
日付や場所をメモに残す
スマホの写真には撮影日時が記録されますが、後から整理するときのために、日付や場所をメモしておくと便利です。
紙に「2026年○月○日 リビング南側の壁」などと書き、そのメモを一緒に写す方法もあります。
また、スマホのアルバム機能で、部屋ごとに写真を分けるのもおすすめです。
たとえば、次のように整理できます。
- 外観
- 玄関
- リビング
- 台所
- 寝室
- 洗面所
- 家電
- 家具
- 浸水跡
- 修理前
- 修理後
被災後は、写真の枚数が多くなります。
後から見返したときに分かるように、できるだけ整理しておきましょう。
動画も補助的に残す
写真に加えて、動画を撮っておくのも有効です。
部屋全体をゆっくり撮影しながら、どこにどのような被害があるかを説明しておくと、状況を伝えやすくなります。
ただし、動画だけに頼るのは避けましょう。
申請や保険請求では、静止画の方が確認しやすい場合があります。
基本は写真、補助として動画を残す、と考えるとよいでしょう。
写真以外に残しておきたい記録
被害状況の記録は、写真だけではありません。
後の手続きや修理のために、次のような情報も残しておくと役立ちます。
- 被災した日時
- 被害に気づいた日時
- 雨漏りや浸水が始まった時間
- 水が引いた時間
- 停電・断水の有無
- 避難した時間
- 修理業者へ連絡した日時
- 応急処置をした内容
- 処分した家財の一覧
- 修理見積書
- 領収書
- 保険会社とのやり取り
被災後は、やることが多く、記憶が曖昧になりやすいです。
スマホのメモ、ノート、カレンダーなどに、簡単でもよいので記録を残しておきましょう。
修理費用や片付け費用が発生した場合は、領収書や見積書も保管しておきます。
自治体の支援制度や保険請求で必要になる場合があります。
罹災証明書の申請で確認したいこと
罹災証明書の申請先は、基本的に被災した住宅がある市区町村です。
ただし、災害の規模や自治体の対応状況によって、申請方法、受付開始時期、必要書類、調査方法が異なります。
申請前に確認したいことは、次のとおりです。
- 申請窓口
- 申請受付期間
- 申請方法
- 必要書類
- 本人確認書類
- 被害写真の提出が必要か
- 現地調査の有無
- 証明書の交付までの期間
- 代理申請ができるか
- マイナポータル等のオンライン申請に対応しているか
被害写真は、罹災証明書の判定そのものを代替するものではありません。
市区町村が住家の被害認定調査を行い、被害の程度を判断することが基本です。
ただし、片付けや応急修理を行う前の写真は、被害状況を伝える資料として役立つ可能性があります。
また、大規模災害では、申請が集中して交付まで時間がかかることがあります。
自治体のホームページ、防災メール、広報、避難所掲示などで最新情報を確認しましょう。
火災保険・地震保険の請求でも写真が役立つ
被害写真は、罹災証明書だけでなく、火災保険や地震保険の請求でも役立つことがあります。
台風、豪雨、雪、ひょう、地震などによる被害では、保険会社や代理店へ連絡し、契約内容に応じて手続きを進めます。
保険請求では、被害状況の写真、修理見積書、事故発生の状況説明などが求められることがあります。
ただし、必要書類や調査方法は保険会社や契約内容によって異なります。
そのため、被害を受けたら、まず保険会社または保険代理店に連絡し、必要な手続きを確認してください。
特に注意したいのは、先に片付けや修理をする場合です。
防犯上や安全上の理由で早く片付ける必要がある場合でも、可能な範囲で修理前・処分前の写真を残しておくと、後から説明しやすくなります。
また、災害後には「保険金を使えば無料で修理できる」などと勧誘する悪質な業者が現れることがあります。
契約を急がせる業者や、保険金請求を不自然にすすめる業者には注意しましょう。
修理を依頼する前に、保険会社や自治体、消費生活センターなどへ相談することも大切です。
被災後に避けたい行動
被災後は、焦りや不安から判断を急ぎがちです。
しかし、後の生活再建のために、次のような行動はできるだけ避けましょう。
写真を撮らずに片付けてしまう
最も避けたいのは、被害状況を記録しないまま片付けてしまうことです。
もちろん、危険物の除去や衛生上必要な片付けは大切です。
ただし、可能な範囲で、片付け前の状態を写真に残しておきましょう。
危険な場所に入って撮影する
写真は大切ですが、危険な場所に無理に入る必要はありません。
倒壊のおそれがある建物、屋根、浸水した電気設備、土砂の近くなどは危険です。
安全が確認できない場合は、自治体や専門家の指示を待ちましょう。
すぐに修理契約を結ぶ
被災後は、早く直したい気持ちから、その場で修理契約を結んでしまうことがあります。
しかし、見積もり内容や工事範囲が不明確なまま契約すると、後でトラブルになるおそれがあります。
可能であれば複数の業者に見積もりを取り、契約内容を確認しましょう。
不安な場合は、消費生活センターや保険会社に相談してください。
SNSに個人情報を含む写真を投稿する
被害状況をSNSに投稿すると、支援につながる場合もあります。
一方で、住所、表札、部屋番号、車のナンバー、家族の顔などが写り込むと、個人情報の問題が起こる可能性があります。
申請や保険請求のための写真と、外部へ公開する写真は分けて考えましょう。
被害写真チェックリスト
最後に、撮影しておきたい写真を一覧で整理します。
家の外
- 建物の正面
- 建物の右側
- 建物の左側
- 建物の裏側
- 屋根の被害
- 外壁のひび割れ
- 基礎のひび割れ
- 玄関・門・塀の被害
- 物置・車庫の被害
- 周辺の浸水や土砂の状況
浸水被害
- 外壁の水位線
- 室内の水位線
- 床からの浸水高
- メジャーを当てた写真
- 泥が流れ込んだ場所
- 畳や床の変色
- 家具や家電の浸水状況
家の中
- 玄関の全景
- リビングの全景
- 台所の全景
- 寝室の全景
- 洗面所・浴室・トイレの全景
- 壁・天井・床の被害
- ドアや窓の破損
- 家具の転倒
- 雨漏りの跡
住宅設備・家財
- システムキッチン
- 洗面台
- トイレ
- 浴室
- 給湯器
- エアコン
- 冷蔵庫
- 洗濯機
- テレビ
- 家具
- 寝具
- 衣類
- 自動車
- 農機具
記録しておきたい情報
- 被災日時
- 撮影日時
- 被害に気づいた日時
- 応急処置の内容
- 修理業者へ連絡した日時
- 修理見積書
- 領収書
- 保険会社とのやり取り
すべてを完璧に撮る必要はありません。
安全を確保したうえで、できる範囲で「全体」と「被害箇所」を残しておくことが大切です。
まとめ:生活再建のために、片付け前の写真を残しておこう
災害で住まいが被害を受けたとき、まず大切なのは自分と家族の安全を確保することです。
そのうえで、安全に撮影できる範囲で、片付けや修理の前に被害状況を写真に残しておきましょう。
被害写真は、罹災証明書の申請、損害保険の請求、修理業者への説明、家族との情報共有などに役立ちます。
家の外は、なるべく4方向から建物全体を撮ります。
浸水した場合は、メジャーなどを使って水の深さが分かるように撮ります。
家の中は、部屋ごとの全景を撮り、被害箇所は引きと寄りの両方で撮影します。
住宅設備、家電、家具、家財も、処分や修理の前にできるだけ記録しておきましょう。
ただし、危険な場所に無理に入って撮影する必要はありません。
倒壊のおそれがある建物、屋根、浸水した電気設備、土砂の近くなどは非常に危険です。
写真よりも命と安全が優先です。
被災後は、慌てて片付けたくなるものです。
しかし、生活再建のためには、被害の記録が大きな助けになります。
「片付ける前に、まず写真」
この一言を、平時のうちから家族で共有しておきましょう。
参考情報
※以下の参考情報は、2026年6月6日に確認しています。
・内閣府「災害に係る住家の被害認定」
・内閣府「住家の被害認定調査における写真撮影に係る留意事項について」
・政府広報オンライン「住まいが被害を受けたとき 最初にすること」
・内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」
・日本損害保険協会「保険金請求に関する注意喚起資料」
・損害保険ジャパン「自然災害による事故のお手続き」
