女性の防災で大切なのは「衛生・プライバシー・防犯」

災害時の備えというと、水、食料、懐中電灯、携帯トイレ、モバイルバッテリーなどを思い浮かべる方が多いと思います。

もちろん、これらは性別に関係なく必要な基本の備えです。

しかし、女性の場合は、それに加えて「衛生」「プライバシー」「防犯」の備えを意識しておくことが大切です。

たとえば、避難生活では次のような困りごとが起こる可能性があります。

  • 生理用品が足りない
  • 下着を替えにくい
  • 着替える場所がない
  • トイレや洗面所が混雑している
  • お風呂に入れない
  • デリケートゾーンのケアがしにくい
  • 夜間のトイレや移動が不安
  • 周囲に相談しにくい悩みを抱える
  • 妊娠中や産後の体調管理が難しい

これらは、命に直結する水や食料の備えに比べると、後回しにされがちです。

しかし、避難生活が数日以上続く場合、衛生やプライバシーの問題は、心身の負担に大きく関わります。

女性の防災は、特別なことをするというよりも、「普段の生活で自分に必要なものを、災害時にも使えるようにしておく」ことが基本です。

避難生活で女性が困りやすいこと

避難所には、年齢、性別、体調、家族構成の異なる人が集まります。

そのため、すべての人が同じ物資や環境で問題なく過ごせるわけではありません。

女性が避難生活で困りやすいこととして、まず挙げられるのが生理用品や下着などの衛生用品です。

災害時には、普段使っている種類やサイズの生理用品がすぐ手に入るとは限りません。

また、避難所で配布があっても、男性スタッフから受け取ることに抵抗を感じる人もいるでしょう。

下着や着替えの問題もあります。

避難所では更衣スペースが十分に確保されていない場合があり、人目が気になって着替えにくいことがあります。

さらに、断水や停電でお風呂に入れない、洗濯できない、トイレが使いにくいといった状況では、体の清潔を保つことも難しくなります。

また、避難所や避難先では、防犯面にも注意が必要です。

多くの人が集まる場所では、夜間の移動、トイレの場所、荷物の管理、子どもとの行動などに気を配る必要があります。

不安を必要以上にあおる必要はありませんが、「自分だけは大丈夫」と考えず、できる備えをしておくことが大切です。

女性用防災リュックに入れたい衛生用品

女性用の防災リュックでは、基本の防災用品に加えて、衛生用品を多めに考えておくと安心です。

ここでは、特に備えておきたいものを整理します。

生理用品・おりものシート

生理用品は、女性用防災リュックで優先して入れたいもののひとつです。

普段使っている種類、サイズ、肌に合うものを備えておきましょう。

災害時に支援物資として生理用品が届く可能性はありますが、すぐ届くとは限りません。

また、自分の体に合うものが用意されているとも限りません。

備えるときは、次のようなものを検討しましょう。

  • ナプキン
  • 夜用ナプキン
  • おりものシート
  • サニタリーショーツ
  • 生理用ショーツ
  • 鎮痛薬
  • 防臭袋
  • 中身が見えない袋

おりものシートは、生理中でなくても下着を頻繁に替えられない場面で役立つことがあります。

避難生活では洗濯が難しくなるため、下着を清潔に保つ補助として使えます。

ただし、肌が弱い方はかぶれに注意し、普段から使い慣れたものを選びましょう。

防臭袋・中身が見えない袋

使用済みの生理用品やおりものシート、下着、衛生用品を処理するために、防臭袋や中身が見えない袋も用意しておきましょう。

避難所では、ごみをすぐに捨てられない場合があります。

また、共用スペースでごみを出すことに抵抗を感じることもあります。

防臭袋があると、においや中身の見え方を抑えやすくなり、精神的な負担も軽くなります。

黒やグレーなど中身が見えにくい袋、チャック付き袋、消臭機能付き袋などを組み合わせると便利です。

小分けにしておくと、防災リュックや普段のバッグにも入れやすくなります。

ウェットティッシュ・デリケートゾーン用シート

断水時や避難所生活では、手洗いや入浴が思うようにできないことがあります。

そのため、ウェットティッシュや体拭きシートは必須に近い備えです。

女性の場合は、デリケートゾーン用のシートも検討するとよいでしょう。

備えておきたいものは、次のとおりです。

  • ウェットティッシュ
  • アルコールなしの体拭きシート
  • デリケートゾーン用シート
  • 携帯用ビデ
  • ティッシュ
  • トイレットペーパー
  • 使い捨て手袋

肌が敏感な方は、香料やアルコールが合わない場合があります。

災害時に初めて使うのではなく、普段から試しておき、自分の肌に合うものを選びましょう。

水不要のスキンケア・ボディケア用品

避難生活では、洗顔や入浴ができないことがあります。

顔や体のべたつき、乾燥、においが気になると、気持ちの面でも負担になります。

最低限のスキンケア・ボディケア用品を用意しておくと安心です。

たとえば、次のようなものです。

  • 拭き取り化粧水
  • オールインワンジェル
  • 保湿クリーム
  • リップクリーム
  • ドライシャンプー
  • 体拭きシート
  • 汗拭きシート
  • ヘアゴム
  • ヘアブラシ

化粧品をたくさん持ち出す必要はありません。

災害時に優先したいのは、清潔を保つことと、肌荒れを防ぐことです。

乾燥しやすい方は、保湿クリームやリップクリームを入れておくとよいでしょう。

着替えとプライバシーを守る備え

避難生活では、着替えのしにくさが大きなストレスになります。

特に女性の場合、下着やインナーの替え、着替える場所、洗濯できないことへの備えを考えておく必要があります。

下着・靴下・カップ付きインナー

防災リュックには、下着と靴下を最低限入れておきましょう。

かさばりにくいものを選び、圧縮袋やチャック付き袋に入れておくと便利です。

女性の場合は、カップ付きインナーも役立ちます。

ブラジャーより締め付けが少なく、避難所での睡眠時や長時間の移動時にも使いやすい場合があります。

備えておきたいものは、次のとおりです。

  • 下着
  • 靴下
  • カップ付きインナー
  • サニタリーショーツ
  • レギンス
  • 薄手の長袖
  • 羽織れる上着

避難所では、冷え対策も大切です。

床に座る時間が長くなることもあるため、靴下やレギンス、羽織れるものを入れておくと安心です。

大判ストール・ポンチョ・ラップタオル

着替えや授乳、休憩時の目隠しとして、大判ストールやポンチョ、ラップタオルがあると便利です。

これらは1つで複数の使い方ができます。

  • 着替え時の目隠し
  • 授乳ケープ
  • 防寒
  • 日よけ
  • ひざ掛け
  • 簡易的な仕切り
  • 寝るときの目隠し

特に大判ストールは、普段の外出にも使いやすく、防災用としても取り入れやすいアイテムです。

レインポンチョは雨具としてだけでなく、着替え時の目隠しにも使えます。

ただし、避難所内での使い方は周囲の状況に配慮しながら使いましょう。

圧縮袋・洗濯ネット・小分けポーチ

着替えや衛生用品は、整理しておかないと防災リュックの中で取り出しにくくなります。

圧縮袋や洗濯ネット、小分けポーチを使うと管理しやすくなります。

おすすめの分け方は、次のとおりです。

  • 生理用品セット
  • 下着セット
  • スキンケアセット
  • 薬・体調管理セット
  • 防犯・ライトセット
  • ごみ処理セット

小分けにしておくと、避難所でバッグの中身を大きく広げずに済みます。

また、家族と共用する防災リュックでも、自分専用のポーチを作っておくと安心です。

避難所での防犯対策

避難所や避難先では、たくさんの人が同じ場所で過ごします。

災害時は誰もが不安を抱えていますが、その一方で、プライバシーや安全への配慮も必要です。

防犯対策は、特定の人を疑うためではありません。

自分と家族が安心して過ごすための基本的な備えです。

防犯ブザー・小型ライト・ホイッスル

女性用防災リュックには、防犯ブザー、小型ライト、ホイッスルを入れておくと安心です。

防犯ブザーは、危険を感じたときに周囲へ知らせるために役立ちます。

小型ライトは、夜間の移動やトイレに行くとき、足元を照らすために使えます。

ホイッスルは、閉じ込められたときや助けを呼びたいときにも使えます。

備えるときは、次の点を確認しましょう。

  • 防犯ブザーの音が鳴るか
  • 電池切れしていないか
  • ライトがすぐ点灯するか
  • バッグの奥ではなく、すぐ取り出せる場所にあるか
  • 家族も置き場所を知っているか

防犯用品は、持っているだけでなく、使える状態にしておくことが大切です。

トイレや暗い場所へ一人で行かない

避難所では、トイレや洗面所、物資置き場などが居住スペースから離れていることがあります。

夜間や人通りの少ない場所へ行くときは、できるだけ一人で行動しないようにしましょう。

特に注意したい場面は、次のとおりです。

  • 夜間のトイレ
  • 暗い通路
  • 屋外に設置された仮設トイレ
  • 人目の少ない更衣スペース
  • 駐車場
  • 物資置き場
  • 建物の裏側

可能であれば、家族や知人、近くの女性同士で声をかけ合い、複数人で移動しましょう。

また、トイレや更衣スペースの場所が暗い、遠い、不安を感じる場合は、避難所運営者に相談することも大切です。

家族や周囲と居場所を共有する

避難所では、家族が別々に行動する場面があります。

物資を取りに行く、トイレへ行く、スマホを充電しに行く、子どもを連れて外へ出るなど、短時間でも居場所が分からなくなると不安につながります。

家族や同行者とは、次のようなルールを決めておきましょう。

  • どこへ行くか伝えてから移動する
  • 何分くらいで戻るか伝える
  • 夜間は一人で移動しない
  • 子どもを一人にしない
  • 荷物を置きっぱなしにしない
  • 貴重品は身につける

小さなルールですが、避難生活では大切です。

災害時は普段よりも混乱しやすいため、平時に家族で話し合っておくと安心です。

妊娠中・産後・子育て中の女性が追加で備えたいもの

妊娠中、産後、子育て中の女性は、一般的な女性向け防災用品に加えて、体調や育児に関わる備えが必要です。

妊娠中の方

妊娠中は、体調の変化や移動の負担を考える必要があります。

追加で備えたいものは、次のとおりです。

  • 母子健康手帳
  • 健康保険証等のコピー
  • 妊婦健診の記録
  • かかりつけ医の連絡先
  • 常備薬
  • ゆったりした下着
  • ナプキン
  • 腹帯
  • 体を冷やさないための上着
  • 飲料水
  • 食べ慣れた軽食

妊娠中は、無理な徒歩避難や長時間の待機が負担になることがあります。

早めの避難判断や、家族との役割分担を決めておきましょう。

産後の方

産後は、授乳、悪露、体力低下、睡眠不足などが重なる時期です。

追加で備えたいものは、次のとおりです。

  • 産褥パッド
  • 授乳パッド
  • 授乳ケープ
  • 母子健康手帳
  • 赤ちゃん用品
  • 体を冷やさない衣類
  • 栄養補助食品
  • 水分
  • 乳腺トラブルに備えたケア用品

産後の体は無理がききません。

避難時は、周囲に遠慮せず、体調や授乳の必要性を伝えられるようにしておくことも大切です。

子育て中の方

小さな子どもがいる場合は、自分の荷物だけでなく、子どもの荷物も必要になります。

その分、母親だけに負担が偏らないよう、家族で分担を決めておきましょう。

追加で備えたいものは、次のとおりです。

  • 子どもの着替え
  • おむつ
  • おしり拭き
  • 食べ慣れたおやつ
  • 飲み物
  • 小さなおもちゃ
  • 子どもの保険証等のコピー
  • 迷子対策用の連絡先カード

女性の防災と子どもの防災は重なりやすい部分があります。

「母親が全部持つ」のではなく、家族で分けて持つことが重要です。

普段のバッグに入れる「0次防災」アイテム

女性の防災では、防災リュックだけでなく、普段のバッグに入れておく0次防災も大切です。

外出先で被災した場合、自宅の防災リュックをすぐ使えるとは限りません。

普段のバッグには、軽くて小さいものを中心に入れておきましょう。

おすすめのアイテムは、次のとおりです。

  • 生理用品
  • おりものシート
  • 鎮痛薬
  • 絆創膏
  • ウェットティッシュ
  • 小型ライト
  • モバイルバッテリー
  • ホイッスル
  • 防犯ブザー
  • 少額の現金
  • 緊急連絡先メモ
  • マスク
  • 小さな防臭袋

すべてを入れると重くなるため、自分に必要なものを選びましょう。

特に、生理用品、モバイルバッテリー、小型ライト、少額の現金は、外出先で役立ちやすいアイテムです。

ポーチにまとめておけば、バッグを替えるときも移しやすくなります。

女性向け防災グッズで避けたい落とし穴

女性向けの防災グッズを準備するときには、いくつか注意したい点があります。

見た目だけで選ぶ

最近は、おしゃれな防災グッズや防災ポーチも増えています。

見た目が良いと持ち歩きやすいというメリットはあります。

しかし、見た目だけで選んでしまうと、必要なものが足りなかったり、実際には使いにくかったりすることがあります。

大切なのは、自分が災害時に本当に使うかどうかです。

普段から使い慣れているもの、肌に合うもの、すぐ取り出せるものを優先しましょう。

生理用品を1種類だけにする

生理用品は、日数や量、体調によって必要なものが変わります。

昼用だけでなく、夜用、おりものシート、サニタリーショーツなど、状況に合わせて使えるようにしておくと安心です。

ただし、かさばりすぎる場合は、防災リュック用、普段のバッグ用、自宅備蓄用に分けて考えましょう。

防災リュックを重くしすぎる

女性用の備えを増やそうとすると、防災リュックが重くなりがちです。

しかし、重すぎるリュックは避難時に負担になります。

持ち出し用には最低限のものを入れ、自宅備蓄用には多めに置いておくなど、分けて備えることが大切です。

家族と共有していない

女性用の衛生用品や防犯用品は、本人だけが管理していることが多いかもしれません。

しかし、災害時には家族が代わりに荷物を持ったり、必要なものを取りに行ったりする場面もあります。

すべてを詳しく共有する必要はありませんが、「女性用の衛生用品はこのポーチに入っている」「防犯ブザーはここにある」など、最低限の場所は家族で共有しておくと安心です。

女性用防災グッズチェックリスト

最後に、女性用防災グッズを一覧で整理します。

衛生用品

  • 生理用品
  • 夜用ナプキン
  • おりものシート
  • サニタリーショーツ
  • 防臭袋
  • 中身が見えない袋
  • ウェットティッシュ
  • 体拭きシート
  • デリケートゾーン用シート
  • ティッシュ
  • トイレットペーパー
  • 使い捨て手袋

着替え・プライバシー用品

  • 下着
  • 靴下
  • カップ付きインナー
  • レギンス
  • 羽織れる上着
  • 大判ストール
  • レインポンチョ
  • ラップタオル
  • 圧縮袋
  • 洗濯ネット
  • 小分けポーチ

スキンケア・体調管理

  • 拭き取り化粧水
  • オールインワンジェル
  • 保湿クリーム
  • リップクリーム
  • ドライシャンプー
  • ヘアゴム
  • ヘアブラシ
  • 鎮痛薬
  • 常備薬
  • 使い捨てカイロ

防犯・安全用品

  • 防犯ブザー
  • 小型ライト
  • ホイッスル
  • モバイルバッテリー
  • 充電ケーブル
  • 少額の現金
  • 緊急連絡先メモ
  • 身分証明書等のコピー

妊娠中・産後・子育て中に追加したいもの

  • 母子健康手帳
  • 妊婦健診の記録
  • 産褥パッド
  • 授乳パッド
  • 授乳ケープ
  • 赤ちゃん用品
  • 子どもの保険証等のコピー
  • 子どもの着替え
  • おむつ
  • おしり拭き
  • 子ども用のおやつ

このチェックリストは、すべてを一度にそろえるためのものではありません。

自分の体調、年齢、家族構成、生活スタイルに合わせて、必要なものを選んでください。

まとめ:女性の防災は、自分の体と生活に合う備えを整えることから

女性の防災では、水や食料、ライト、携帯トイレといった基本の備えに加えて、衛生用品、着替え、プライバシー、防犯への備えが重要です。

特に、生理用品、おりものシート、防臭袋、下着、カップ付きインナー、大判ストール、小型ライト、防犯ブザーなどは、避難生活での不安を減らす助けになります。

避難所では、着替えやトイレ、洗面、入浴、防犯など、普段は意識しないことが大きな負担になる場合があります。

だからこそ、平時のうちに「自分がないと困るもの」を確認しておくことが大切です。

女性向け防災グッズは、特別なセットを買うことから始めなくても構いません。

まずは、普段使っている生理用品や衛生用品を少し多めに持つ。

普段のバッグに、小型ライト、モバイルバッテリー、防臭袋、少額の現金を入れておく。

防災リュックには、着替えやプライバシーを守るための大判ストールやポンチョを入れておく。

このような小さな備えからでも十分に始められます。

防災は、誰かにとっての正解をそのまま真似することではありません。

自分の体、自分の生活、自分の家族に合わせて、無理なく続けられる備えを整えていきましょう。

参考情報

※以下の参考情報は、2026年6月6日に確認しています。

・内閣府男女共同参画局「災害対応力を強化する女性の視点」
・内閣府男女共同参画局「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」
・内閣府男女共同参画局「避難生活|災害対応力を強化する女性の視点」
・内閣府「防災女子の会からの提言」
・首相官邸「災害の『備え』チェックリスト」
・首相官邸「災害が起きる前にできること」
・東京都防災ホームページ「東京くらし防災」
・東京都消費生活総合センター「災害への備え・・・日常備蓄、していますか?」

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家庭防災の教科書 編集部
家庭の防災・停電対策・在宅避難に役立つ情報を発信する編集部です。地震・台風・停電・断水などに備え、ポータブル電源、非常食、保存水、簡易トイレ、防災グッズなど、暮らしの中で取り入れやすい「現実的な備え」をわかりやすく紹介しています。